秋の夜空を眺めて、目的もなくただ歩いた。
ベンチに腰掛けて、何気なく周りを見る。スケートボードを楽しむ少年達、残業帰りの会社員。2人、闇に消えていく男女。
誰もこちらなんて見ない。何も話さないから自分の存在が希薄になって、まるで消えてるように思える。
でも隣には君がいて、手を優しくにぎりしめ、街の夜空だから星は少ないけど、朧に見てる三日月の目。
誰もこちらなんてみない。存在が希薄になっている。でもそれは自分達ではなく、周りにいる人達。僕らだけしかいない。感じるのは、夏の終わり。少し肌寒い風。
その風は僕らにだけ吹いていて、僕らの中を通り抜け何も言わず過ぎ去っていく。でもその肌寒い風が無言の囁きを僕らにくれる。
この時だけは、過ぎて行く時間をうらむ。ずっと、このままでいたい。君の横顔を見ていたい。
ふいに涙がこぼれる。悲しくないのに、何故か止まらない。でも、そのままがいい。
秋の夜の夜空、朧な三日月