2011年9月20日火曜日

現実と誇り

 今回の旅で、旅行会社にいろいろ話を聞きながら予定や宿を決めたのですが、旅行会社の方に聞いたところ、大雑把にいうと東北新幹線の線路から太平洋側、浜通り方面の宿のほとんどは、復興の為の作業員さん滞在場所として、ほとんどのホテル、旅館などは営業していない。とのことでした。

 あと、希望のひとつとして、パンフレットの写真にあるような、地元産の食事は出るのでしょうか?と訪ねたところ、その確証は難しいとのこと。まぁ仕方ないといえばそうなんですが。

 結構前に予約したこともあって、宿は無事確保。というか、「観光客」という点においては、やはり少ないということ。復興支援パックなどもありましたが、実際の所、普段より予約は少ないとのことでした。悲しい話ですが、やはりそれも現実の1つかと。

 一日目、旅館での食事。ナベはビーフシチューが入っていました。まだ新米の季節ではないし、米ソムリエでもないので、これはドコ産?と聞かれても分かりません。

 無難な料理。といえば聞こえはいいですが、本来であれば、もっと地元色の強い食事なのかな。と思いました。要予約で桜肉(馬肉の産地でもあるんですね)の特別料理などもありましたが、ちょっと。。。高かった。。


 平日というのもあってか、食事をとっているのはテーブルの数の1/3程度でした。それが多いのか少ないのかは分かりません。が、新幹線はほぼ満席でしたが、郡山で降りる方はボランティアの方達(ヘルメットを持参していた為)乗っている数に比べると少ないな。。。というのが印象的でした。

 初日、検問の所にあったガイガーカウンターの下に花を見つけました。周りに誰もいない現実。日々累積する放射線。その中でなにを思うのだろう。

 そこに咲いたのは自分の意思ではないけれど、何もいわず、キレイな色の花を咲かせている。まるで何事もないように。



 2日目、先日書いたようなルートで福島市に到着しました。宿をとっていなかったので、駅の観光案内所にて手配。その際、案内のお姉さんに、地元の人達が行く美味しいお店を教えて欲しい。と訪ねました。

 駅より一本通りを通過したレンガの道一帯に飲み屋などがあるとのこと。地元産の美味しい物食べようぜ。ならちょっと高くても焼肉とかいいよね。なんて事前話していたので、焼肉屋さんを紹介して頂きました。



 ホテルでしばし休憩をとり、頃合になったので、地図を片手にそのエリアへ。なるほど。確かにチェーン店ではなく、自営の飲食店が軒を連ねます。

 紹介して頂いた焼肉屋さんに到着。お洒落な感じのするっていうか高そうなお店でした。そして頼んだお肉が上の写真。うわメチャクチャうまそう。ロース、バラ肉カルビは刺身でも食べられるので、ちょっと炙った程度でお召し上がりください。というほど、新鮮なお肉を提供する店でした。内臓刺身盛りなんてのもあって、え、レバ刺以外にあるんだ。なんて思い注文。湯通ししてあったものの、これまた美味でした。


 お肉の味は。。。というと、本当に美味しく、うわ口の中で溶けるわ~なんて感想。やっぱ違うね。なんて話をしていたんです。ですが。。。


 メニューを見ると、値段の所にシールが貼ってありました。一皿2000円。でも、よくよく透かして見ると、2の後ろに5という数字。どの物にもそのシールは貼っており、全てが半額以下の値段になっていました。

 肉離れがいなめない所、仕方ないのか。。。と思っていた矢先、お店の人が席を替わって欲しいとの要望。別にかまいません。と席を移動しました。そこでその場のTPOに合わない事を承知で、馬肉の産地でありながら、熊本産の馬肉をメニューに出しており薄々は。。。いや見当はついていたのですがあえて質問しました。


 「このお肉、大変美味しいのですが、仙台牛や米沢、福島牛なのですか?」


 友人は黙っていました。そこは聞くところではないこと。その辺は自分も分かっています。でも、1/1000の期待と、確認という意味で。店員さんは言いました。


 「当店は、冷凍のお肉は提供いたしません。全て冷蔵で仕入れしご提供しております」

 「お客様には、やはり安全・安心の気持ちで美味しく召し上がっていただく為、現在は福岡牛を取り寄せております」

 「本来であれば地元産の牛肉を使いたいのですが、やはり安心して食べて頂きたいのです」



 店員さんは笑顔でそう答えていました。何度も聞かれた事でしょう。が、胸の中では奥歯をかみ締めていたと思います。近くに自慢の牛肉がありながら、それを提供できない悔しさ。必ずあると思います。


 生で食べれるほど新鮮、かつ冷蔵で福岡から仕入れるとすると、やはり空輸なんだろうな。その仕入れにかかるコストを考えれば、近くの方が安くすむのに、仕入れコストが高くなっているのにメニューでは値段を半額以下にしている。


 そこに、福島で経営している焼肉屋としての「誇り」を感じました。いつか絶対に地元産の牛肉を出すんだ。という決意。利益が下がっても経営し続ける事。その前向きな姿勢。

 食べ終わった後、その界隈を一周するように歩いて帰りました。金曜日なのに人は少なく見えました。が、お店に入っている客の笑顔、お店の人の顔。そこには悲観的ではなく、前向きな顔がありました。


 たらふく食べた後、2人の共通な感想。美味しかったね。ではなく




 もう、福島、大好き。